村野 (白泉社文庫)

村野 (白泉社文庫)

私はあんまり不条理系SFショートショートがあんまり理解できない残念な子で(というかSFに全般的に弱い)、坂田靖子先生の英国風のこじゃれた作品はとてもとても好きなんですが、SF短編にもビビッと来ることは全然ありませんでした。でも、この「村野」に入っているショートショート系は比較的わかりやすかったです。他に白泉社から出ている短編集「月と博士」はちょっとだめだったんですが…。特に表題作の村野(これはSFじゃない)は、ちょうど良い寂しい余韻があって見事でした。坂田靖子はこうゆう人間味がいまいちないようなハチャメチャで意味のわからないキャラクターを描くのが物凄く上手いと思います。それでいてほんのり一部に人間らしさをにじませてくるので、それがとても胸に響くという。普段ギャグしているキャラが死んだりした時に通常の三倍の勢いで感動するのと同じ原理ですね。
とにかく彼女の作品については、世間で言われているように、「ハイセンス」と言うしか言いようが無い不思議な魅力があると思います。何か月並みですけど。
初めて見た人が、「なんだこの落書きは!」と叫んでしまうような、基本的な人体のバランスが崩れまくったこの上手とはいえない絵柄に単純な目が、なんか無我の境地に達しているような…。
ガロとかアックスみたいな不条理は好きなのに、SF系の不条理系が全く理解できない自分の脳が腹立たしい…。