水城せとな 窮鼠はチーズの夢を見る

窮鼠はチーズの夢を見る (ジュディーコミックス)

窮鼠はチーズの夢を見る (ジュディーコミックス)

 ずっと前にshinta_sus4から勧められたやおい漫画。頭が良い方のやおい漫画でした。
 作者はちゃんと人間観察ができている人なので、ノンケ主人公の「本当は自分で選択しているのにも関わらず、選択肢に抵抗せず流されるふりをする、ちょっと卑怯なダメなやつ」みたいなのが、すごくよく表現できていました。この主人公は本当にだめで、ゲイの男に迫られて「俺は本当はこんなの認めてない」とか言いながら全然抵抗せずに、自分をただ一人無条件に愛してくる存在に甘え続け、でも、普通にだめんず好きの女子に好かれてすぐやっちゃう。主人公の人間観察がよくできている反面、相手のゲイの男はどこまでもどこまでもファンタジーで、その対比がよかったです。その二人に加えて、いろんな女の子たちが絡んで来ることで、二人がさらに浮き立つ。
 この作者は普段は普通に少女漫画を描いているとのことだけれども、この作品においては、女の人はうまくかかれてはいるけれども、BL作家が描く女子という枠から出ずにいた。なんていうか、BLに出てくる女子みたいな、記号的な存在だった。「そんなことウジウジ考えてるから勃たないのよ 恥ずかしい男」とかとか言っちゃうところが超記号的!イデア!こんなセリフは、青年漫画やおいマンガに出てくる、女であって人間ではないキャラクターが言っちゃうセリフ。女の人に主眼を置いた作品なら、こんな事言う女は絶対に出てこない。他の作品は読んだことがないのですが、多分これだけたくさん女の人を描いている人だから、もしかしてこうゆうのを狙って描いたのかな、それとも二人に主眼をおいたらこうなってしまっただけでしょうか。
 やおいとか正直超うといんですが、私の「やおいマンガなんてどうせ『好きしょ』とか『お金がない』みたいなんだろ?」という概念が最近覆りつつあります(両作品のファンの人すみません…)。でもきっとこれも気づくの遅いですね。賢やおいマンガ業界には、よしながふみがずっと昔からいたというのに、今更何を言っているんだろうかくらいですね。やはり大人のやおいマンガになると、「ゲイの苦しみ」みたいのを混ぜこんでくるのでしょうか、これがリアルなゲイの苦しみかどうかは知らないけれども…。